象嵌(ぞうがん)とは

京都を代表する伝統工芸「京象嵌」の由来、製造工程について
御紹介します。

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象嵌とは
About

象嵌とは象形文字の「象(かたど)る」という文字に「嵌(は)め込む」という文字を組み合わせたものです。一つの素材に異質の素材を嵌め込むという意味で、金工象嵌・木工象嵌・陶象嵌などがあります。

象嵌の歴史
History

象嵌の歴史は極めて古く、鉄精錬が始まったとされる紀元前1500年頃、シリアのダマスカスにて金工象嵌が始まりました。
遡ること青銅器時代の紀元前3000年頃、隕鉄を利用し象嵌を施されたと思われる像が、トルコのアナトリア文明博物館に存在します。
青銅器から鉄器へと時代が移るにつれ技術が確立し、地中海を中心に、中央アジア・ヨーロッパ・北アフリカへと伝播したものと考えられます。

出典:三ヶ尻林遺跡4号古墳(埼玉県教育委員会所蔵)
写真提供:埼玉県教育委員会

日本には飛鳥時代に伝わったとされ、石上神社(奈良県天理市)の神宝「七支刀」が、日本国内に現存する最古の象嵌製品です。国内で作製された最古の象嵌製品は、稲荷山古墳(埼玉県行田市)から出土した鉄剣(471年推定)です。
象嵌は、京都を中心に全国へ広がりました。鉄地表面を掘り、金銀と同じ高さに嵌め込む技法を「平象嵌」、表面より高く金銀が浮き出る技法を「高肉象嵌」など象嵌には様々な技法があります。

鉄砲伝来以降、武器・武具へ広く応用された技法に「布目象嵌」があります。多方向に細い切れ目を入れた鉄地表面の谷間に金銀を打ち込む技法です。京都で繁盛したことから「京象嵌」と呼ばれています。

明治9年の廃刀令により衰退しましたが、政府指導の下、装飾小物を手掛けるようになりました。金銀の高尚優雅な色、落ち着いた艶の持ち味が‘金属工芸の王者’として高く賞賛され、現在に至っています。

象嵌の制作工程
Flow

  • 布目切り

    鉄生地の表面を磨き、象嵌の施す箇所に鏨を用い細い溝を刻みます。
    方向を違え1ミリに10本の溝を刻みます。

  • 入嵌

    純金・純銀・青金の平金や線などを打ち込みます。
    模様を描いた後、製品の表面を金槌で均します。

  • 腐食・錆び出し・錆止め・漆焼き

    硝酸水で製品の表面を腐食します。
    その後、塩化アンモニウム水で3〜4日かけ製品の表面に錆を出し、上茶で煮て錆止めをします。
    漆を塗っては焼く作業を複数回繰り返します。

  • 研ぎ出し、毛彫り

    模様の上を朴炭で研ぎ出し、鋼ヘラで磨き光らせます。
    金・銀の表面に毛彫りをして深みのある図柄に仕上げます。

  • 完成

    京象嵌小野の特長である「梨地風地模様」の入った、鉄と漆の重厚な質感をお楽しみ下さい。